Force12 EF-180BV

  1. はじめに
    ローバンドのコンディションが上がる中、現在使っているロングワイヤーアンテナに限界を感じ、新たに3.5MHz/3.8MHzのアンテナの導入をしましたのでレポート致します。
    当局は1本のクランクアップタワーを所有し、7MHzから28MHzまで3本のアンテナが上がっています。アンテナの設置環境を考える中、今回のアンテナを選択するポイントとして、
    * タワー上にアンテナを追加するのは不可能。
    * 土地が狭いためワイヤー系のアンテナは設置不可。
    * クランクアップタワーのため、タワーを使ったワイヤー系のアンテナ設置は不安。
    * 3.5MHz/3.8MHzに出られること。
    * 最後に効率がよく、DXに対してよく飛ぶこと。
    そんな私の要望を満たすアンテナとして、今回導入したのは「Force12社EF-180BV」です。

  2. アンテナの概要
    EF-180BVは、Force12社が開発したリニアローディングシステムを採用した3.5MHz/3.8MHz 1/4λバーチカルアンテナ(表1、写真1)です。このアンテナは、6Y2AがQRPの世界新記録を更新した時に使われたものと同じものです(CQ誌2002年3月P176)。アンテナのコンセプトは、1本でマルチバンド運用できる事より、飛ばす事を優先する設計になっています。他社のローディングコイルが入ったアンテナに比べ、ロスが少ないために高い放射効率を持ち、VSWRが2.0以下のバンド幅は60KHzもあります。
    関連文献を読むと、地上高は不要でむしろ接地型に近い設定で打ち上げ角が最低になるように設計されています。一般的に接地型アンテナはアースの影響で性能が大きく変化します。このアンテナでは、ラジアルを併用することで、接地抵抗の善し悪しに関わらずアンテナの本来の性能を引き出す事が可能と書かれています。接地抵抗を無視できる海水の上に設営する時は、ラジアルは不必要です。バーチカルアンテナですので垂直偏波で無指向性ですが、2つのバーチカルを組み合わせて特定方向にビームを作る事も可能です。
    現在、Force12社では、バーチカルダイポール系(シグマシリーズ)のアンテナが主流となり、リニアローディングシステムを採用したこの系統のアンテナの販売は少なくなったと聞いています。EF-180BVの一番の魅力は、バーチカルダイポール系と比較すると場所をとらないことです。
    構造は、Force12社の製品で特徴のあるリベットを使った組み立て方式で、耐風速40.2m/sec に設計されています。給電点にはヘアピンコイルを使いインピーダンスを上げ、バランを使い給電します。

    価格:  69,400円(本体66,100 税3,300)

    全長:  10.21m(短縮率54%)

    周波数: 3.5MHz-4.0MHz
    リレーにて80m/75mを切り替えて
    使用可能(オプション)

    エレメント数: 1

    専用バラン:3Kw(別途7,600円)

    写真1 Force12社EF-180BV 表1 EF-180BVの価格とスペック

  3. リニアローディングシステム
    リニアローディングの技術は、アンテナを短縮するために挿入されるローディングコイルのロスを限りなく小さくするために考え出された方式で、ローディングコイルを引き伸ばして線にしてしまったものです。Qが高くロスが非常に少ないのが魅力です。しかし、よいことばかりではなく欠点としてはコイルに比べるとサイズが大きくなります。図1のように配置を工夫しコンパクトにまとめる事で商品化されたものが、Force12社のリニアローディングシステムです。線材は鋼鉄線の周囲をアルミメッキして、引っ張りに強く高周波のロスを少なくした特殊なものを使っているのが特徴です。


    図1 リニアローディングシステム

  4. アンテナの組み立て
    アンテナは2mの箱に詰められ、宅配便で輸送されてきました。箱を開いてみると10数本のアルミパイプと絶縁パイプ、ヘアピンコイル、通電グリス、マニュアルが梱包されていました。
    主要部分は予め工場で組み立てられているので(プリ・アッセンブリ・タイプ)設営はいたって簡単です。各パイプにはリベットを通す穴が3箇所加工さられています。一番細いパイプ(先端)から挿し込みながら組み立てていきますが、その時に細いパイプに通電グリスを塗り、次のパイプ(次に太いパイプ)に挿し込みリベットで締めます。この時の注意点として、3箇所全ての穴に一旦リベットを挿し込んだ状態で、リベットを一つひとつ締めるようにします。これは工場でパイプに穴を開けるとき、エレメントの挿し込み方向の間違えを防止するため穴の間隔を多少ずらしています。そのため、間違った方向で挿入された場合、リベットを全ての穴に挿し込むことができないので気がつきます。正常に挿し込まれた場合でも、リベットを締めることでパイプが多少ずれ、他の穴に後からリベットを挿入することが出来なくなる場合があります。万が一、間違って締めてしまったら、ドリルでリベットの頭の部分に穴を開けると外れます。
    アンテナは全長10mと長いので、リニアローディング部より上部のエレメントと下部のエレメントと分けて組み立て、リニアローディングワイヤーを張った後に、2つのエレメントをつなぐと楽でしょう。
    このリニアローディングワイヤーには鋼鉄線が使われています。鋼鉄線は丸まって梱包されているので真直ぐに伸ばしてから、張るのがコツです。ワイヤーをエレメントに留めるところはボルトで締めて留めますが、ワイヤーのすっぽ抜けを防止するためにちょっと長めに切り、折り返しをつけます。鋼鉄線ですので、とても硬く一度曲げてから伸ばすと折れてしまいますので注意が必要です。


  5. 設置場所
    バーチカルアンテナですので地面に設置し本来は1/4波長のラジアルを少なくとも2本を空中に張る必要がありますが、ワイヤーアンテナさえ張れない場所なので5mくらいの長さのビニール線をラジアルとし放射状に8本くらい張って地中に浅く埋設することで、電線と大地の間にコンデンサを形成して高周波電流を大地に流す、カウンターポイズ方式を取ります。多少の損失は覚悟の上ですが、わずかな設置面積で80/75mバンドにQRVしようというのだから全てを理想的にとはいかず、多少は我慢も必要です。
    設置場所はForce12社の国内代理店であるエレクトロデザインの木下社長に相談したところ、「シャックの屋根が、トタン屋根であれば最高」とのことでした。トタン屋根自身が最高のラジアルとなり、給電点を高く取れてしかも打ち上げ角は低く保てます。屋根に直接接地するのは無理でしょうから表面にビニール線を8方向くらいに這わせます。長さは屋根の形状に合わせることで、任意の長さでかまわないそうです。
    設置場所を色々と検討をする中、当局の場合は落雷を避けたいためと外観を重視する理由で屋根に上げるのは残念し、駐車場の隅っこに単管パイプを基台として設置しました。放射状に張るカウンターポイズが理想ですが、土地の境界線に水が流れていない水路があるのでこの水路にカウンターポイズを這わせることにしました。

  6. 調整方法
    アンテナ自体のバンド幅は60KHzほどありますが、このまま80/75mバンド全てカバーするのはちょっとキツイので、まずはバンドの高い周波数(3.80MHz)に調整し給電点にローディングコイルを入れて低い周波数に同調を取ることにしました。アンテナアナライザーを使い同調点を3.80MHzにあわせます。調整はとても簡単でリニアローディングワイヤー上に接続されているチューニングジャンパーを上下しながら同調を取ります。
    次はインピーダンスの調整です。カウンターポイズの聞き具合は、アンテナのインピーダンスを計ればわかります。ヘアピンコイル無しの状態でアンテナのインピーダンスをアナライザーで測ります。設計値では37Ωくらいになれば、理論上のアース損失は0です。45Ωから50Ωくらいの範囲に入ればアンテナとしてはまずまず使えます。37Ωよりインピーダンスが上がった分がアースのロス分です。最初、カウンターポイズを2本だけ地上に這わせインピーダンスを測定し、あとで全て接続した時と比較するとカウンターポイズの利きがわかります(表2)。当局の設置環境では、8本以上張っても効果がありませんでした。
    カウンターポイズを張った後、給電点にヘアピンコイルを取り付け伸び縮みさせてインピーダンスの調整を行います。




    カウンターポイズ数
    インピーダンス
    2本(10m長)
    49Ω
    4本(10m長)
    46Ω
    6本(10m長)
    43Ω
    8本(10m長)
    39Ω
    10本(10m長)
    39Ω

    表2 カウンターポイズ数とインピーダンスの違い

  7. ローディングコイルの挿入
    アンテナのバンド幅が広いとは言ってもバンドの各ポイントでVSWRを低く保つには、給電点にローディングコイルを挿入し切換ることで低い周波数に同調が取れるようにします。アンテナは既に3.80MHzに同調していますので、3.52MHzあたりに同調するようにコイルを作成します。コイルは直径5cmぐらいの適当な塩ビパイプにホームセンターで売られている2mmの銅線を20回ぐらい巻くと良いでしょう。そこからカットアンドトライで3.52MHzに同調が取れるようにコイルの巻き数を調整します。次はコイルに 3.78MHzと3.55MHzに同調が取れるポイントを探しタップを付けます。このタップをショートすることで各周波数に同調が取れるようになります。これで全バンドをアンテナチューナー無しでカバーします。
    写真では、先日のデイトン・ハムベンションで見つけた中古の可変インダクター(12ドル、写真2)に取り替えて利用しています。この可変インダクターは12個のバネ(接点)がコイル上をスライドし、別々独立したタップが取れます。調整は至って簡単で、アンテナアナライザーを見ながらバネをスライドし目的の周波数に近いところに合わせます。運良く160mバンドにも同調が取れましたので2回路分を160mに設定しました。写真を見てもらえば分かるように、一番左(1.82MHz)と左から2番目(1.91MHz)がバネの位置が右のバネから比べると下の方に(コイルを長く使っている)設定されています。


    図2 ローディングコイル

    デイトンで購入したコイル
     
     

  8. 使用感と今後の課題
    よく「垂直系は、ノイズが多い?」と言われることなのですが、以前使っていたロングワイヤーと比べても確かにノイズは多くなりました。アンテナをつなぎロングワイヤーアンテナと交互に切り替え聞き比べてみると受信でSが1ぐらい、飛びは相手のSメーターで2ぐらい良くなっています。早速、夕刻の北米とQSO。ロータリーダイポールやビームアンテナとは比較になりませんが、80/75mバンドに出たいがスペースがないという局には選択肢の1本だと思います。
    今後の課題として現在アンテナ直下にて手動でバンドを切り替えていますが、シャック内からリレーを使い切り替えられるように工夫したいと考えています。
    最後ですが、アンテナを設置するにあたりアドバイスをいただきましたエレクトロデザインの木下社長と駐車場の隅っこのスペースを提供してくれた、よき理解者である妻に心から感謝申します。


    技術資料(英文)
    http://force12inc.com/brvinfo.htm

     

このドキュメントは、EDCが販売するForce12 EF-180BV を設置したときの走り書きをWeb化した物です。この走り書きが各局の参考になればと思い作成しました。

作成 7M1FCC <7M1FCC @ JARL・コム>

著作権・免責事項

 

7M1FCC トップへ